技術資料

高速シリアル伝送における差動クロストークの影響と対策例

1.はじめに

 高速シリアル伝送では、Tx~Rx間の透過特性(伝送損失:Sdd21)に応じた信号が伝播することになるため、この特性確保と定量評価が重要である。伝送線路の損失は、半導体の波形補正機能を用いることで、一定のリカバリーが可能である。しかしながら、近年、高速IO端子の増加、高密度化に伴い、差動ペア間のクロストークによる影響で、十分に波形補正がなされず、結果として、伝送距離や伝送速度が制限されるという問題が生じる(図1)。

図1 高速シリアル信号伝送における差動クロストークの影響

 

 本検討では、差動配線同士が同一層内または層間で隣接するような評価基板を用いて、クロストークが伝送品質に及ぼす影響や対策方法について実機評価により検証した。

2.方法

差動3ペアが同一層内または層間で隣接するクロストーク検証用の評価基板を作製した。これにはSMA同軸コネクタが実装されており、ネットワークアナライザを用いて周波数特性やTDR測定が可能である。また、同軸ケーブルを介して、疑似ランダム信号パターン(PRBS)が入出力可能なFPGAボードに接続し、伝送実現性を検証した。層間クロストーク検証例として、ラインカードとバックプレーンを模擬したシステムを図2に示す。

図2 実機検証システム

 

ここで、信号伝送経路を通過した後のアイパターン(信号波形を重ね書きしたもの)をサンプリングオシロスコープを用いて実測したり、FPGA内イコライザ後のBERを専用ツールにて検証した。

3.結果

 同一層内のクロストーク検証例として、結合配線長が300mmの場合の外層配線および内層配線のアイパターン、BER検証結果を図3に示す。

図3 同一層内の差動クロストーク検証例(3Gbps/12Gbps)

 

外層配線の場合、加害者なし(単一チャネル動作)に比べ、加害者あり(差動3ペア同時動作)の際に伝送品質が劣化した。一方、内層配線は加害者の有無に関わらず同等の品質であった。クロストーク対策の観点では、透過特性を確保できることを前提とし、内層配線が選択肢となる。

 

 層間クロストーク検証例として、(a)コネクタ挿入用スルーホールのクリアランスが大きく、層間で配線同士が重なる場合と(b)これが小さく、配線の重なりがない場合のBER検証結果を図4に示す。

図4 層間の差動クロストーク検証例(12Gbps)

 

(a)では、同時動作時に伝送品質が大きく劣化し、(b)では同等品質であった。

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