技術資料

クロストークの現象とは
~クロストークの原理と対策

1.クロストークとは
クロストーク、日本語では”漏話”と呼ばれる現象は、アナログ電話時代に他の通話の内容が漏れ聞こえて来るから名付けられましたが、現在の高速デジタル信号のやり取りに於いては、他の信号配線に影響を与える、他の信号配線からの影響を受けるという信号品質劣化という形で顕在化します。一言でクロストークと言っても、隣接する配線において信号送信部である加害者の近傍で生じる近端クロストーク(NEXT)と受信端近傍で生じる遠端クロストーク(FEXT)、振幅への影響と遅延時間に対する影響、内層と外層の違い等、様々な事象が含まれます。本技術資料では、隣接配線を用いて前記様々な事象を個々に確認した結果を記載しています。

 

2.実験内容と結果
(1)実験1 外層配線における隣接配線の結合量とクロストークの影響
図1に実験に用いる基板を示します。基板は2種類で平行した2本の配線の結合量に差異があります。配線長(結合部のみ)は共に130mmです。

 

 

 

(a)外層配線 結合 強/弱 によるODD/EVENモード遅延時間差
図2に結合度差異に対するODD/EVENモードの伝播遅延時間差を示します。この場合のODDモードを平行2線に生じる信号遷移が逆極性である場合、EVENモードを同極性に遷移する場合となります。主な特徴は、
●外層配線の結合線路では、隣接配線の信号遷移次第で伝播遅延時間が変わる
・Oddモード伝送はEvenモード伝送より伝播速度が速い
・結合が強い程、Oddモード伝送とEvenモード伝送の遅延差は大きくなる
●B仕様の30psec差を100mm長に置き換えると23psec/100mmの時間差が生じる(これは配線長差3~4mm程度に相当する)

 

 

 

(b)外層配線 結合 強/弱 による遠端クロストーク
図3に結合度差異に対する遠端クロストークの違いを示します。
外層配線の遠端クロストークの特徴をまとめると
・信号遷移の変化に応じた幅で発生する
・信号遷移に対し逆極性のパルスが発生する
・線間の結合が強い程、振幅が大きくなる

 

 

 

(c)外層配線 結合 強/弱 による近端クロストーク
図4に結合度差異に対する近端クロストークの違いを示します。
外層配線の近端クロストークの特徴をまとめると
・結合配線長に応じた幅で発生する
・信号遷移に対し同極性のパルスが発生する
・線間の結合が強い程、振幅が大きくなる

 

 

 

(2)実験2 内層配線/外層配線 クロストーク比較
図5に内層配線/外層配線のクロストーク比較に用いる実験基板を示します。実験に用いるのは150mmの配線のみで、図は外層配線の基板ですが内層配線も同等な基板も用います。

 

 

 

(a)内層配線/外層配線 ODD/EVENモード遅延時間差
●内層配線では、ODDモード伝送とEVENモード伝送の遅延差が少ない
・外層配線で51psec(@150mm)に対し、内層配線は3psec
・内層配線では、ODDモードとEVENモードの実効誘電率が(ほぼ)等しい

・高精度な等遅延配線の実現には外層より内層配線が有効

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