プリント基板総合メーカー|RITAエレクトロニクス株式会社 > 事例紹介 > 高速差動配線ペア内結合と伝送損失
伝送損失の理解とペア内結合有無
高速信号伝送に対応したプリント配線板で注意する点として伝送損失があります。伝送損失の影響を考慮した場合、差動配線のペア間の結合等、どのような配線仕様とするのが良いでしょうか?
プリント配線板の材料は誘電体で、電気特性を示すパラメータとして比誘電率εrと誘電正接tanδがあり、また電気信号を伝送するパターン配線には導体としての体積抵抗率(または導電率)が存在します。
伝送損失は、誘電正接tanδによる誘電損失と、表皮効果を含む導体抵抗による導体損失の和であり、高周波になると損失は大きくなります。
伝送損失量は Sdd21(差動のエネルギー伝達量)の大きさ(絶対値)で表されます。
図1に結合配線長の違う3種類の配線を準備し、これらのSdd21の測定結果を示します。
この結果より、配線が長くなるほど伝送損失は大きくなり、また単位長さ当りで表現が可能であることがわかります。
差動信号伝送の伝送路には差動インピーダンスがあり、終端部のインピーダンスに整合させるのが一般的ですが、所望のインピーダンスを得る際,配線間の結合量次第で、同一絶縁層厚において様々な配線仕様を実現可能です。
図2は絶縁層間厚120μmにおける、
結合“弱”(W=0.21mm,S=0.50mm)、
“中”(W=0.16mm,S=0.20mm)、
“強”(W=0.11mm,S=0.11mm)の3種類の配線における100mm当りのSdd21を測定した結果です。
このケースにおいて、結合“強”は結合“中”より損失量は大きいが、結合“中”は結合“弱”と比較し大差がありません。
これは、高周波電流が配線パターンの縁に集中するため、ある太さ以上からは伝送損失にあまり影響を与えないことを示しています。
伝送損失の低減を考慮して、結合の少ない配線とする事で配線幅を太くする場合もありますが、前記のように、ある程度の太さ(弊社実験例では0.16mm)以上になれば配線の幅は伝送損失にあまり影響はありません。
結合を皆無とした平行配線は、配線間の間隙を含め多くの領域を占有する為、引き回しが難しくなる場合があります。
差動信号伝送のメリットを活かす為にも、完全に結合を有さない平行配線ではなく、結合を有した配線仕様をお奨め致します。
伝送損失低減を考慮した信号伝送であっても、差動ペア内結合無しが最適な配線仕様ではありません。
伝送損失の低減を考慮して、結合の無い平行配線とする事で配線幅を太くする場合もありますが、配線の引き回しや差動配線のメリットを活かす為にも結合があった方が望ましいと言えます。
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