プリント基板総合メーカー|RITAエレクトロニクス株式会社 > 事例紹介 > プリント基板の電源ノイズ対策
電源からノイズが発生している可能性があり、その対策をしたい。
電子機器の高速化と大電流化によりLSIから発生した電源ノイズが不要輻射の原因になることがあります。コンデンサや対策部品およびプリント基板の接地方法やシールドで対策する方法もありますが、実装密度や筐体の制約により十分な対策が出来ないことがあり、この場合の対策方法を求められました。
プリント基板から発生する不要輻射には「発生源」「伝搬経路」「アンテナ特性」の3つの要素が関係しています。それぞれを特定することでノイズ対策をします。
ただし、アンテナ特性を直接プリント基板の設計で変更することはできないため、発生源と伝搬経路を中心に対策を施します。
a. 発生源の特定
まず、問題となっている基板のノイズ源を特定します。手法としては、3m法等の電波暗室にて、遠方界の放射ノイズ測定を実施し、問題となってる周波数を特定します。今回のボード(図1)では、最もノイズが大きいのは388MHzであり、次点は144MHzでした。影響しているデバイスを基本周波数を元に特定します。複数ある場合は、動作周波数を変えてみる、または、動作しているデバイスの機能を制限してみるなどの方法を取ります。
b. 伝搬経路を特定する。
問題となるデバイスが特定できた後は、伝搬経路を特定する作業を行います。
回路的な問題は無いということを前提として、まず、パターン設計が適切なデザインとなっているのかを確認します。確認には、EMCの基本設計が出来ているか、層構成が適切であるか、という項目について、弊社のルールに照らし合わせて行います。
上記である程度仮説を立てたら、実際に実機の基板を使って仮説を検証します。図1のプリント基板では信号系ノイズであるか、または電源系ノイズであるかの切り分けを行いました。信号系ノイズには、信号線にダンピング抵抗を入れたり、リターン経路を適切にするためリターン経路にコンデンサやビアを配置します。電源系ノイズには、電源とGNDの間にコンデンサを追加したり、電源をプリント基板を介さずに直接供給するなどの手段をとります。今回は電源系が有効であることが確認できました。
伝搬経路の特定が出来た後に実際に設計の変更を入れます。以下はその一例です。
a. 層構成を変更し、GNDを強化する。
6層板で標準的な層構成A(L1:S、L2:G、L3:V、L4:S、L5:V、L6:S)と層構成B(L1L1:S、L2:G、L3:SV、L4:SV、L5:G、L6:S)とを比較しました。なお、Sはシグナル層、GはGND層、Vは電源層、SVは信号と電源のミックス層を指します。この結果、前述の144MHzと388MHzにおいて、それぞれ15dBμV程度ノイズが低下しました(図2、基板B)。
b. 電源層をパターン化し、ノイズ拡散を抑制する。
電源層はリターンパス確保のためにはべた層とするほうが有効ですが、リターン経路が確保できるのであれば、パターンで供給した方が良い場合もあります。電源をべた配線とした場合とパターン配線とした場合とを比較しました。この結果、電源をパターン配線にした方が、前述の144MHzと388MHzにおいて、それぞれ15dBμV程度ノイズが低下しました(図3、基板C)。
「層構成を変更しGNDを強化する方法」または「電源層をパターン化しノイズ拡散を抑制する方法」により、前述の144MHzと388MHzにおいて、それぞれ15dBμV程度ノイズを低減することが出来ました。
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