プリント基板総合メーカー|RITAエレクトロニクス株式会社 > 事例紹介 > 信号線の放射ノイズ対策ーパターン設計によるノイズ低減
信号配線から発生しているノイズを、パターン設計だけで低減したい
信号速度の高速化に伴い、プリント基板の配線パターンに高周波の電流が流れると不要輻射となることがあります。ダンピング抵抗などで高周波成分をカットすることにより不要輻射を低減できることもありますが、信号品質に影響を及ぼして誤動作に至ることもあり、信号品質を確保したまま不要輻射を低減したいという要望がありました。
まず、回路が機能するためにはリターン経路が無ければなりません。プリント基板においてはこのリターン経路は電源プレーン、グランドプレーンまたは自由空間がなりえます。
低周波のリターン経路は信号線路と結合せずに存在しますが、高周波のリターン経路は信号線路に沿うようにインピーダンスの低い箇所に存在します。このリターン経路は信号線路のミラーイメージか、近傍に位置する他のトレースを通ります。リターン経路がミラーイメージで結合が100%に達したとき、電磁波を打ち消しあいノイズが最小となります。ただし、プリント基板の物理的制約により100%に達成することはありません。
リターン経路が信号線路から1cm離れると、GND側に1nHのインダクタンスが入った等価回路と同じとなります。これが不要輻射の原因となります。
リターン経路が離れる原因としては、平面的にはプリント基板の信号層のリファレンスプレーン上のスリットがあります。また、立体的にはリターン経路を分断してしまう層間があります。
前者の模式図は図1となり、リターン経路を最短で確保できなかった場合(スリットあり)とリターン経路を確保した場合(スリットなし)について、3m法電波暗室にて遠方界の測定を行いました。
リターン経路を確保することにより、635MHzにおいてノイズを約9dBμv/m低減することが出来ました(図2、B)。
また、立体的なリターン経路の分断対策としては、信号線のスルホールの近接にリターン経路となる層間接続ビアを設けることが有効です。
スリットの場合と同じく、リターン経路を最短で確保できなかった場合(層間接続用ビアなし)とリターン経路を確保した場合(層間接続用のビアあり)について、3m法電波暗室にて遠方界の測定を行いました。リターン経路を確保することにより、288MHz、576MHzなどにおいてノイズを約6dBμv/m低減することが出来ました(図3、D)。
実際のパターン設計での対応
上記の通りリターン経路の確保は信号線路から発生するノイズ低減には非常に有効です。実験結果では10dBμV/m程度ノイズ低減が出来ました。
高密度・高多層のプリント基板になってくるとリターン経路を人手により確認しなが設計するのは、かなり困難となります。そこで、弊社ではEMI抑制設計支援ツール(NEC製DEMITASNX)を活用し、最適パターン設計を行っています。
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