プリント基板総合メーカー|RITAエレクトロニクス株式会社 > 技術資料 > 電源インピーダンスの実測・シミュレーションの相関検証
電源供給回路の品質を良くするには、半導体の動作に伴い電源端子に流れる過渡電流に対し、そこに発生する電圧変動を抑制する必要がある。その評価パラメータの1つがインプット・インピーダンス(Z11)であり、これが小さいほど発生するノイズを低減することができる。このZ11をプリント基板の設計段階において、電磁界シミュレーションにより定量的に表し、デザインレビューの判断材料にすることが普及している。
今回は、電磁界シミュレーションで算出されるこのZ11の確からしさを実測結果と比較し、相関性があるか検証したので報告する。
実測は、ベクトルネットワークアナライザを用い、特定の電源端子から見た電源配線のSパラメータを取得し、Z11を算出した。
シミュレーションは、電磁界シミュレータ(SIwave)を使用し、実測と同一箇所からの電源配線のSパラメータを解析し、Z11を算出した。その際、電源配線に実装したコンデンサは実測で使用した型番と同様のSパラメータをWebからダウンロードし、使用した。
一例として、DDR4の電源電圧である1.2Vの電源配線に対し、Z11の実測とシミュレーションの相関を確認した。測定は、(a)コンデンサ未実装(生板)、(b)コンデンサ実装の2条件で行った。測定箇所、搭載したコンデンサの定数・場所は図1に、測定結果は図2に示す。それぞれ、実測結果は赤系のライン(実測)、シミュレーションは青系のライン(Sim)で表示した。
(a)基板外観 | (b)シミュレーション図 |
図1 対象基板 |
(a)コンデンサ未実装(生基板) | (b)コンデンサ実装 |
図2 測定結果 |
まず、(a)コンデンサ未実装(生板)の結果から1.2V電源の自己共振周波数は230MHzで実測とシミュレーションは良く一致しており、基板単体における電磁界シミュレーションの精度に問題がないことが分かる。
次に、(b)コンデンサ実装の結果から、各種コンデンサの自己共振周波数(4.7μF:2MHz、0.22μF:10MHz、0.068μF:20MHz)が観測され、実測とシミュレーションは相関の取れた結果が得られている。200MHz以上でピークの周波数に差異が見られるが特徴はとらえた結果となっている。
図3 実測とシミュレーションの比較 |
最後に、WebからダウンロードしたコンデンサのSパラメータ、シミュレータに準備されているコンデンサのSパラメータに関し、注意点を記載する。図3のように、0.47μFのコンデンサのSパラメータと実測と比較すると、極稀に、容量値が不足しているモデルが存在する。シミュレーションを行う際、Sパラメータの特性に問題ないか確認することが望ましい。
Z11の実測とシミュレーションで相関の取れた結果が得られ、シミュレーションによるZ11解析が有用であることが分かった。
また、シミュレーション時に使用するSパラメータはコンデンサの容量値を満足しているか確認することが望ましい。
本シミュレーションをパターン設計段階で実施することにより、以下効果が期待できる。
(1)半導体動作に伴い発生するノイズの低減
(2)バイパスコンデンサの定数の最適化
(3)電源配線のバイパスコンデンサ実装部位の低インダクタンス化
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